2013/09/24

ミストラの学者たち

平凡社大百科事典を読む楽しみの一つが、思いもかけない執筆者に出会うことです。 おそらく小説を書き出す前の時代の池澤夏樹がギリシアの地名項目、「ミストラ」を執筆しています。
(ほかにも、地名項目や現代文学者の項目を執筆しています)



「ギリシア旅行案内」(川島重成、1995、同時代ライブラリー、岩波書店)にはないが、補筆・改題された「ギリシア紀行」(2001、岩波同時代文庫)には追加されたのはアンナさんの写真だけではない。

最終章「ギリシア・ビザンティン紀行」で時代と空間が広がりました。

そのうちの一つがスパルタ近郊の城砦都市ミストラから輩出された人文主義的知識人たちのこと。マヌエル・クリソラス、イォルイオス・イェミストス・プレトン、ヨアネス・ベッサリオン、コンスタティノス・ラスカリス。




この一節、古典ギリシアに夢中で読み落としてしまいました。

ミストラに関わる学者人名として、新プラトン主義の哲学者「プレトン」、カトリック枢機卿になったビザンティンの人文主義者「ベッサリオン」の項目が平凡社百科では立項されています。カトリック新大百科も同様です。ほかにも外交官の「マヌエル・クリソロス」、文法家「コンスタンティノス・ラスカリス」などがいるようですが、これらの項目はキリスト教人名辞典で見ることができます。

日本語で読めるベッサリオンについての記事はレイノルズ&ウィルソン「古典の継承者たち」が平凡社百科、カトリック新大百科、キリスト教人名辞典などの事典類の記述よりも詳しいようです。事典類が字数制限のためか通り一遍の記述であるのに対し、東西両教会の合同の神学的根拠についての主張を紹介しているところが読めます。

英語だとナイジェル・ウィルソン「ビザンティンからローマへ」のほか、ゲネアコプレス(?Geanakoplos, Deno John)が気になりますが、イタリア語圏やドイツ語圏ではしっかりした研究書もあるようです。井上浩一氏の著作をみればかなりの見通しがたつのではと期待しています。

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