コンスタンチン・パレオロガス
ビザンチン帝国最後の皇帝、コンスタンチン11世。
(1404ー53、在位1449ー53)
マヌエル2世と
ヘレナ・パライオロギナの子。兄の死後、ミストラで即位。王冠はヴェネツィアに質入れしていたので戴冠式はできなかったという。コンスタンチノスでスルタン、メフメト2世の攻撃により、死亡。城の壁とも大理石ともなったと伝えられる。ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
以下は、大辞林第3版(2006)から。
以下は、大辞林第3版(2006)から。
おたんちん
まぬけ。人をののしっていう語。 「夫 (それ) だから貴様は ─ ,パレオロガスだと云ふんだ /吾輩は猫である 漱石 」
〔遊里語〕 嫌いな客。 「好かぬが ─ という也 /洒・鄽数可佳妓 」
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もう少し長く用例を引用します。
もう少し長く用例を引用します。
〔泥棒に入られた後、被害届を書く主人夫婦の会話〕
(前略)
「それから?」
「山の芋が一箱」
「山の芋まで持って行ったのか。煮て食うつもりか、とろろ汁にするつもりか」
「どうするつもりか知りません。泥棒のところへ行って聞いていらっしゃい」
「いくらするか」
「山の芋のねだんまでは知りません」
「そんなら十二円五十銭くらいにしておこう」
「馬鹿馬鹿しいじゃありませんか、いくら唐津(からつ)から掘って来たって山の芋が十二円五十銭してたまるもんですか」
「しかし御前は知らんと云うじゃないか」
「知りませんわ、知りませんが十二円五十銭なんて法外ですもの」
「知らんけれども十二円五十銭は法外だとは何だ。まるで論理に合わん。それだから貴様はオタンチン・パレオロガスだと云うんだ」
「何ですって」
「オタンチン・パレオロガスだよ」
「何ですそのオタンチン・パレオロガスって云うのは」
「何でもいい。それからあとは――俺の着物は一向(いっこう)出て来んじゃないか」
「あとは何でも宜(よ)うござんす。オタンチン・パレオロガスの意味を聞かして頂戴(ちょうだい)」
「意味も何なにもあるもんか」
「教えて下すってもいいじゃありませんか、あなたはよっぽど私を馬鹿にしていらっしゃるのね。きっと人が英語を知らないと思って悪口をおっしゃったんだよ」
「愚(ぐ)な事を言わんで、早くあとを云うが好い。早く告訴をせんと品物が返らんぞ」
「どうせ今から告訴をしたって間に合いやしません。それよりか、オタンチン・パレオロガスを教えて頂戴」
「うるさい女だな、意味も何にも無いと云うに」
「そんなら、品物の方もあとはありません」
「頑愚(がんぐ)だな。それでは勝手にするがいい。俺はもう盗難告訴を書いてやらんから」
「私も品数(しなかず)を教えて上げません。告訴はあなたが御自分でなさるんですから、私は書いていただかないでも困りません」
「それじゃ廃(よ)そう」と主人は例のごとくふいと立って書斎へ這入(はい)る。細君は茶の間へ引き下がって針箱の前へ坐る。両人ふたり共十分間ばかりは何にもせずに黙って障子を睨(にら)め付けている。
(以下略)
「山の芋が一箱」
「山の芋まで持って行ったのか。煮て食うつもりか、とろろ汁にするつもりか」
「どうするつもりか知りません。泥棒のところへ行って聞いていらっしゃい」
「いくらするか」
「山の芋のねだんまでは知りません」
「そんなら十二円五十銭くらいにしておこう」
「馬鹿馬鹿しいじゃありませんか、いくら唐津(からつ)から掘って来たって山の芋が十二円五十銭してたまるもんですか」
「しかし御前は知らんと云うじゃないか」
「知りませんわ、知りませんが十二円五十銭なんて法外ですもの」
「知らんけれども十二円五十銭は法外だとは何だ。まるで論理に合わん。それだから貴様はオタンチン・パレオロガスだと云うんだ」
「何ですって」
「オタンチン・パレオロガスだよ」
「何ですそのオタンチン・パレオロガスって云うのは」
「何でもいい。それからあとは――俺の着物は一向(いっこう)出て来んじゃないか」
「あとは何でも宜(よ)うござんす。オタンチン・パレオロガスの意味を聞かして頂戴(ちょうだい)」
「意味も何なにもあるもんか」
「教えて下すってもいいじゃありませんか、あなたはよっぽど私を馬鹿にしていらっしゃるのね。きっと人が英語を知らないと思って悪口をおっしゃったんだよ」
「愚(ぐ)な事を言わんで、早くあとを云うが好い。早く告訴をせんと品物が返らんぞ」
「どうせ今から告訴をしたって間に合いやしません。それよりか、オタンチン・パレオロガスを教えて頂戴」
「うるさい女だな、意味も何にも無いと云うに」
「そんなら、品物の方もあとはありません」
「頑愚(がんぐ)だな。それでは勝手にするがいい。俺はもう盗難告訴を書いてやらんから」
「私も品数(しなかず)を教えて上げません。告訴はあなたが御自分でなさるんですから、私は書いていただかないでも困りません」
「それじゃ廃(よ)そう」と主人は例のごとくふいと立って書斎へ這入(はい)る。細君は茶の間へ引き下がって針箱の前へ坐る。両人ふたり共十分間ばかりは何にもせずに黙って障子を睨(にら)め付けている。
(以下略)
夏目漱石「吾輩は猫である」第五回
(青空文庫から。底本:「夏目漱石全集1」ちくま文庫、筑摩書房
1987(昭和62)年9月29日第1刷発行)
1987(昭和62)年9月29日第1刷発行)