2013/09/24

コンスタンチン・パレオロガスあるいはオタンチン・パレオロガス

コンスタンチン・パレオロガス

ビザンチン帝国最後の皇帝、コンスタンチン11世。

(1404ー53、在位1449ー53)

マヌエル2世と

ヘレナ・パライオロギナの子。兄の死後、ミストラで即位。王冠はヴェネツィアに質入れしていたので戴冠式はできなかったという。コンスタンチノスでスルタン、メフメト2世の攻撃により、死亡。城の壁とも大理石ともなったと伝えられる。


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以下は、大辞林第3版(2006)から。

おたんちん 

語義区分 1 まぬけ。人をののしっていう語。  それ だから貴様は  ,パレオロガスだと云ふんだ /吾輩は猫である 漱石 
語義区分 2 遊里語 嫌いな客。 好かぬが  という也 /洒・鄽数可佳妓 」

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もう少し長く用例を引用します。

〔泥棒に入られた後、被害届を書く主人夫婦の会話〕

(前略)

「それから?」
「山の芋が一箱」
「山の芋まで持って行ったのか。煮て食うつもりか、とろろ汁にするつもりか」
「どうするつもりか知りません。泥棒のところへ行って聞いていらっしゃい」
「いくらするか」
「山の芋のねだんまでは知りません」
「そんなら十二円五十銭くらいにしておこう」
「馬鹿馬鹿しいじゃありませんか、いくら唐津(からつ)から掘って来たって山の芋が十二円五十銭してたまるもんですか」
「しかし御前は知らんと云うじゃないか」
「知りませんわ、知りませんが十二円五十銭なんて法外ですもの」
「知らんけれども十二円五十銭は法外だとは何だ。まるで論理に合わん。それだから貴様はオタンチン・パレオロガスだと云うんだ」
「何ですって」
「オタンチン・パレオロガスだよ」
「何ですそのオタンチン・パレオロガスって云うのは」
「何でもいい。それからあとは――俺の着物は一向(いっこう)出て来んじゃないか」
「あとは何でも宜(よ)うござんす。オタンチン・パレオロガスの意味を聞かして頂戴(ちょうだい)
「意味も何なにもあるもんか」
「教えて下すってもいいじゃありませんか、あなたはよっぽど私を馬鹿にしていらっしゃるのね。きっと人が英語を知らないと思って悪口をおっしゃったんだよ」
愚(ぐ)な事を言わんで、早くあとを云うが好い。早く告訴をせんと品物が返らんぞ」
「どうせ今から告訴をしたって間に合いやしません。それよりか、オタンチン・パレオロガスを教えて頂戴」
「うるさい女だな、意味も何にも無いと云うに」
「そんなら、品物の方もあとはありません」
頑愚(がんぐ)だな。それでは勝手にするがいい。俺はもう盗難告訴を書いてやらんから」
「私も品数(しなかず)を教えて上げません。告訴はあなたが御自分でなさるんですから、私は書いていただかないでも困りません」
「それじゃ廃(よ)そう」と主人は例のごとくふいと立って書斎へ這入(はい)る。細君は茶の間へ引き下がって針箱の前へ坐る。両人ふたり共十分間ばかりは何にもせずに黙って障子を睨(にら)め付けている。
(以下略)


夏目漱石「吾輩は猫である」第五回
(青空文庫から。底本:「夏目漱石全集1」ちくま文庫、筑摩書房
   1987(昭和62)年9月29日第1刷発行








ミストラの学者たち

平凡社大百科事典を読む楽しみの一つが、思いもかけない執筆者に出会うことです。 おそらく小説を書き出す前の時代の池澤夏樹がギリシアの地名項目、「ミストラ」を執筆しています。
(ほかにも、地名項目や現代文学者の項目を執筆しています)



「ギリシア旅行案内」(川島重成、1995、同時代ライブラリー、岩波書店)にはないが、補筆・改題された「ギリシア紀行」(2001、岩波同時代文庫)には追加されたのはアンナさんの写真だけではない。

最終章「ギリシア・ビザンティン紀行」で時代と空間が広がりました。

そのうちの一つがスパルタ近郊の城砦都市ミストラから輩出された人文主義的知識人たちのこと。マヌエル・クリソラス、イォルイオス・イェミストス・プレトン、ヨアネス・ベッサリオン、コンスタティノス・ラスカリス。




この一節、古典ギリシアに夢中で読み落としてしまいました。

ミストラに関わる学者人名として、新プラトン主義の哲学者「プレトン」、カトリック枢機卿になったビザンティンの人文主義者「ベッサリオン」の項目が平凡社百科では立項されています。カトリック新大百科も同様です。ほかにも外交官の「マヌエル・クリソロス」、文法家「コンスタンティノス・ラスカリス」などがいるようですが、これらの項目はキリスト教人名辞典で見ることができます。

日本語で読めるベッサリオンについての記事はレイノルズ&ウィルソン「古典の継承者たち」が平凡社百科、カトリック新大百科、キリスト教人名辞典などの事典類の記述よりも詳しいようです。事典類が字数制限のためか通り一遍の記述であるのに対し、東西両教会の合同の神学的根拠についての主張を紹介しているところが読めます。

英語だとナイジェル・ウィルソン「ビザンティンからローマへ」のほか、ゲネアコプレス(?Geanakoplos, Deno John)が気になりますが、イタリア語圏やドイツ語圏ではしっかりした研究書もあるようです。井上浩一氏の著作をみればかなりの見通しがたつのではと期待しています。

聖書の写本

ミストラの博物館で。新約聖書ヨハネ福音書の写本。Tzycandyles codex Par. G. 135

Manuel Tzycandyles はミストラで1360年代に活動した有名な写本作成者らしい。
手もとのメッツガーやアーラントを少しのぞいたけれど、よくわかりません。宿題。

「ビザンツ皇妃列伝―憧れの都に咲いた花」


井上浩一「ビザンツ皇妃列伝憧れの都に咲いた花」(白水uブックス、2009)。

帰国後、書棚に埋れていたこの本を発掘。
最終章「ヘレナ・パライオロギナ−−−謎に包まれた最後の皇帝の母」を読了。彼女の過ごしたのビザンティン都市遺構です。






ミストラ



ミストラ。スパルタ近郊。ビザンティン都市遺構。

2013.09.24 行程

・スパルタ市内
競技場前のレオニダスの銅像
スパルタ・アクロポリス
バジリカ
劇場の上に「カルキコス(青銅の)アテーナー」神殿跡
劇場
・オルティア(直立の)アルテミス神殿
・スパルタ市内
スパルタ博物館を見学

・ミストラ ビザンティン遺跡 13世紀中頃建、621メートル エウリョタスの谷間を一望
いくつかの教会(砦から降りてゆく途中)
アギア・ソフィア
アギオス・ニコラオス
パンタナッサ
(女子修道院)
メトロポリス

・子羊料理
・マンティネイア アルカディア スパルタとテーバイとの古戦場 『饗宴』のディオティマの出身地

・アテネ着
ヘロディオンホテル
・タベルナ「VIZANTINO」にて夕食